ヨット鉛筆

「東洋文具鉛筆製作所」として大正5年に創業。
第二次大戦をはさんで三菱・トンボと並んで鉛筆三大メーカーに数えられていた。
大半の商品に「yacht」とヨットマークの刻印がある。

昭和8年、ヨット鉛筆梶B

昭和42年10月、倒産。

倒産後、東都鉛筆加工業協同組合(現・東都鉛筆加工業協同組合)が「ヨット」の商標を使用していたこともある。




鉛筆が紐で結わえられていた時代の紙帯。



戦前のゴールドヨットの缶ケース。オークションで入手したものですが、鉛のような物凄い金属臭が漂ってます。



代表的な商品の一つである8000番。JISマークが入る前のもの。スライド式の紙ケース。

追記・・・東都鉛筆加工業協同組合がヨットの商標を使用していた件ですが、同組合発行の「日本鉛筆史」を読んでいると、当時の田端理事長が鉛筆業界の歴史を残すことに熱心であったことがうかがわれ(日本鉛筆史の筆者でもある)、なかでも三大ブランドでありながら消滅てしまった「ヨット」を復活させようという思いから、東都組合の鉛筆に使用したのではないかという気がしてならない。




前出の「ゴールデンヨット」の戦後版でNo.9500です。べロールの「ヴィーナス」によく似ています。



この品物にもちょっとしたエピソードがありまして、コーリン鉛筆を探しに個人の文具店を訪れた際に、奥さま曰く店主の自慢している「古い鉛筆」があるとのこと。

帰り際にやっとこれが出てきたのですが、昭和42年のメーカー廃業後、店に巡回してきた文具卸の人に「昔は『ヨット鉛筆』というのがあってねぇ」と、これを見せては一本ずつあげていたとのこと。奥様が「あれ、あったでしょ」としきりに言うので店主は名残惜しそうにこれを持ってきたのですが、いま思えば手放したくなかったのでしょうね。それを考えるとこのメーカーが存在した証しにこの写真を載せなくてはと思った次第です。



「ヨット」というとこの「ゾル(SOL)製特許芯」という言葉を連想します。

古くからのお店の什器にはたくさんのヨットマークの鉛筆が残っていることもあり、かつての大手だと実感させられます。昭和26年に経営破たんし経営者が変わりますが、私が文具店経営者数人のお話を伺った際には「昭和25年頃、大手の商品が欠品し、その代替品として問屋からコーリン鉛筆の製品を勧められた」というふうに聞いたことがありますので、業界三位のメーカーが入れ替わったいきさつもこの辺の事情によるのかもしれませんね。  

 H20.3.9 作成
 H20.11.13 加筆
 



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