コーリン鉛筆探訪記

 

「コーリン本社跡探訪」

 2006年9月のある日、昔コーリン鉛筆の本社があったという東京の東新小岩を訪れた。

ひょっとして、その名残があるのではないだろうかと考えたからだ。

JRの新小岩駅を下車して、地元の自警団?の方らしき人物に聞いてみる。

「コーリン鉛筆の本社跡ってどのあたりかわかりますか。」

「ここに三十年以上住んでるけど、コーリンなんて聞いたことないよ。」

「・・・・。」

 

地図上の位置では1キロ以内の距離と思われたのに地元の人間が知らないとは・・・。

と思いつつ、北上する。

 

いよいよ2、3百メートル以内だなと言う場所に来て、おばちゃんに聞いてみる。

「コーリン?、そういえばあったわねぇ。行っても何もないと思うけど。」

といいつつ大まかな場所を教えてもらう。最初イメージしていたコーリン城下町というイメージは消え去りつつある。何せ、一キロも離れると田舎と違い目立つもの以外は聞いても答えられない。後から知ったことだが、工場は水海道市にあったのでこの場所で大々的に文房具を生産していたわけではないのだ。

 

この一角に違いないという場所に来て、途方にくれる。全くそれらしい痕跡がない。普通の住宅街だ。横断歩道を見ていたお年寄りに聞いても全く知らない。近くのお店に聞いてもコーリン倒産後に移転してきたところが多く要領を得ない。「警察に聞いてみたら?」といった調子だ。

 

漸く古くからのお店を見つけて、確実な場所を教えてもらう。

 

 

どうやら、ここに間違いないらしい。言われたとおり普通のお店と住宅になってしまっている。

近くにある住宅地図の看板を確認するが、何かその痕跡を無くしたいと思われているかのごとくに、完全にコーリンの文字は消し去られていた。倒産整理ですぐに売却されてしまったのだろう。過去の会社の記録など貴重なものはどこに行ってしまったのだろうか。

 

近くの文房具店にも聞いてみた。

 

「コーリン鉛筆?、そんな昔のことは忘れたな。どこにあったかも記憶にないよ。」

 

という、信じられない答えが返ってきた。そこそこ9年くらい前のことである。しかも近所で自分の商売と深く係わり合いのある業界メーカーの存在すら忘れられつつある。都会では思いのほか時間が過ぎるのが早いのだなと思いつつ、この場所を後にした。

 

数百メートル歩いたところで、先ほど聞き込みをした店の方と偶然すれ違い、話しかけられた。

「見つかりましたか?」

「ええ、わかりました。」

 

なんだか少し救われた気分になった。

 

 


 H18.12.9 更新

 


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